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牧野正幸:persistence of hole

「persistence of hole」
牧野正幸 神戸芸術工科大学大学院 総合デザイン専攻 1年

001makino

【講評】
persistence of holeとあるので、穴がいっぱいあってくどい、という意図ではなく、穴というものの執拗性、ということがテーマになっているのだと思います。ドローイングから読み取れたのは、モノの形が不分明な状況であること、そこにやはり形ではなく色の滲みのように向こう側の世界が覗けていること、そこを体験する人がほとんど裸であること、です。こうした世界観は、実は、コンペの審査をすると、いつもいくつかお目にかかるもので、けっして独創的とは言えません。その意味では、弱いのですが、このイメージから、実際の建築にどうもっていくのか、そこに発見と個性が現れると思うので、そのイメージを具体的な建築として、どう提示できるかに期待しています。(青木淳)

吉丸貴一郎:palette

palette
吉丸貴一郎 九州産業大学 工学部 建築学科 4年

025yoshimaru

【講評】
大小さまざまな、またいろいろなプロポーションの四角い窓のようなものが、画面のなかに、ちらばっています。そのちらばり方には、強いコントラストが見られません。整然というわけではないけれど、お互いがお互いとの距離を考えているようなバランスがあります。そのため、大きな1枚の壁があって、そこにさまざまな窓が開いているような「並列性」を感じさせます。その並列性と、身体や事物の平坦な描かれ方があいまって、ここには、独特の世界観が表われています。この世界観に忠実な建築空間とはどのようなものなのだろうか、興味をもって、最終講評案を待ちたいと思います。(青木淳)

村野哲哉:Wood landscape plan

Wood landscape plan
村野哲哉 慶應義塾大学大学院 理工学研究科 1年

041murano

【講評】
ピカソの「地中海の風景」をトレースして、そこから2次元のパターンを抽出した、とあります。その方法自体には、ぼくは重きをまったく置いていません。しかし、そのパターンが、実に楽しい。堅苦しいところがまるでなく、いまにも動き出しそうな躍動感が漲っていて、どんな細部にも夢が溢れています。このパターンを、都市の平面図として読んでみる、というこの案の作者の気持ち、よくわかります。だから、期待しましょう。この平面図から、この感覚を残しながら、あるいは発展させながら、どんな3次元空間が立ち上がってくるのか、を。(青木淳)

山神達彦:そこにあるもの

そこにあるもの
山神達彦 神戸芸術工科大学 環境・建築デザイン学科 3年

045yamagami

【講評】
ここで語られている、とことん突き放された感じの魅力は、たとえば、坂口安吾が、うまく言葉にしています。(「文学のふるさと」とか、「日本文化私感」とか。)作者は、それが、単に環境の巨大さによるのでもなく、またその特徴的な形によるのでもなく、では、どんな要因によって生まれる感覚なのか、ということを、ドローイングを描くことによって探ろうとしているようです。おそらく、分節の密度分布のありかた、形が生まれてくるときのその根元にある厳密な生成ルールの存在、生成時に起きる暴走、といったところが、その答えになるでしょうか。こういうスタディから出てくる空間に、期待しています。(青木淳)

吉村雄史:ガラスとミラー

ガラスとミラー
吉村雄史 神戸芸術工科大学 環境・建築デザイン学科 4年

053yoshimura

【講評】
ガラスも鏡も、割れると、それまであった距離感や奥行きがなくなる、という指摘が、画面の左側半分を使って語られていますが、正直、ぼくにはこれがよく理解できませんでした。だからなのだと思いますけれど、画面の右側半分いっぱいに描かれた絵に添えられた、「ガラスのようなミラーのような、距離も見え方も、フラットな状態の建築」というキャプション、これもぼくには理解不能です。しかし、この課題は、「言葉から建築へ」ではありませんので、そういうことには、いっさい目をつむりました。そのくらい、画面の右側半分いっぱいに描かれたドローイングが、おもしろかったのです。事物が太く不器用な輪郭線で描かれています。その線がかすれています。それから、それら図像と無関係に、これまたかすれたひび割れの線がかぶさっています。実に変な絵です。ガラスと鏡の話が、作者の頭のなかで科学反応を起こして、このドローイングが生まれたのでしょう。作者が、ガラスと鏡の話を展開するのではなく、このドローイングから出発して、その世界観を建築にもっていってくれることを期待しています。(青木淳)

古家良輔:Daydream-Architecture

Daydream-Architecture
古家良輔 大阪工業技術専門学校 建築士専科 1年

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【講評】
イメージパースが6枚あって、そのどれもが、そこにいる人と違う関係を張っていることを示しています。ということは、ここで想定されている空間は、外から眺められるひとつの一様な空間というのではなく、いろいろな場があって、それらを体験することによってひとまとまりの空間として認知されることになる空間、ということなのでしょう。つまり、これは夢のなかに現れた、1本の細く背の低い木ではなく、それら木々のある場所の体験そのものを模っているのだろうと判断しました。ただし、してみると、最後の「仮に人が一人はいれるほどのスケールに落とし込み」が、辻褄があいません。そのあたりが微妙ではあるのですけれど、ドローイングを道具にしなければできそうもないこのスタディ。ここは、最終講評案への展開を期待しましょう。(青木淳)

南野望:ドローイング達の建築

ドローイング達の建築
南野望 神戸芸術工科大学 環境・建築デザイン学科 4年

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【講評】
課題の意図を、まるで、汲んでいません。ドローイングをつかって設計してください、の「つかって」は、「それを媒体として」という意味で捉えられることを想定していますけれど、この作者は、「それを構成要素として」と、曲解しています。しかし、おもしろい。同じ要素なのに、感覚にわずかな差があるものを集めていって、全体をつくる。さて、この案をここから更に発展させることができるのだろうか、というと、ぼくはたいへんに疑問なのですけれど、もしそれが可能であれば、ほんとうにすばらしい。だから、それにすごく期待し、選びました。(青木淳)

鈴木絢:AN ideal

AN ideal
鈴木絢 バンタンデザイン研究所名古屋校 空間デザイナー専攻 1年

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【講評】
発想されている内容の荒唐無稽さと、ドローイングの洒脱な非現実感とが、よくあっています。ドローイングは、現実化がそうとうに困難なイメージを扱うのに向いた道具ですから、その効用が見事に利用されていると思います。その結果、ここでは、ある種「マンガ」的世界観(あるいは空気の質)が提示されることになっているのですけれど、その「マンガ」的なモノのあり方とは、具体的にはいったいどんなものなのか、を探っていただければ、と思います。(青木淳)


馬場沙織:クウカンはリンカク リンカクはクウカン

クウカンはリンカク リンカクはクウカン
馬場沙織 神戸芸術工科大学 環境・建築デザイン学科 4年

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【講評】
長方形の各頂点から内側に向かって45度の角度で同じ長さの斜線を描き、その4つの斜線の端部を結ぶ長方形を描きます。すると、長方形は、5つの領域に分かれます。(台形が4つ、長方形が1つ。)各領域を塗るか塗らないか、とすると、2の5乗、つまり32通りのパターンができます。作者は、うち27パターンを選び(なぜ?)、それらを縦7マス、横8マス、都合56マス(なぜ?)のグリッドになかに配置しています(どういうルールで?)。ともかく、それらの2次元パターンは、その中央に向かう斜線ゆえに、一点透視図法で描かれた3次元空間を想像させます。そして、作者はその空間での人の居方(いかた)を想像して、人の姿を描き込んでいます。このカタログ的網羅性がとてもおもろいと思いました。もっとも、「クウカンはリンカク リンカクはクウカン」とだけ書かれていますけれど、その意味はわかりません。(青木淳)

飯田はるか:つらなる、そしてかさなりあう 影のドローイング

つらなる、そしてかさなりあう 影のドローイング
飯田はるか バンタンデザイン研究所名古屋校 空間デザイナー専攻 1年

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【講評】
悪夢のようなドローイングです。道の両側に、ぬめっとした壁が、うねうねと、ひろがったりせばまったりしながら続いている暝い町に、一人、入り込んでしまったような、そんな不安の感覚がよく表わされています。この感覚を残す建築ができたら、すごそうです。映画でこういう町を描こうとすれば、映画セットが必要です。まずは、そのセットの設計と思って、進めてみたらいかがでしょうか? (青木淳)


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